第313回心の花宮崎歌会ー互選票を目指して
2017-07-05
「自転車は葉のささやきを聞きいたり蜘蛛の繋ぎし糸電話にて」「古井戸にいっぴき暮らすもののごと見上げていたりまあるい月を」
(歌会互選最高得票歌より)
台風が北部九州を駆け抜けた一日、その影響も見当たらず第313回心の花宮崎歌会が開催された。これまで宮崎歌会では、投歌順にすべての歌に対して批評を加えていたが、ここのところの人数増加に伴い、互選票で得票を得た上位の歌から時間をかけて批評をするという方式に変更することになった。じっくりと批評を受けるには、まず互選票を獲得を目指すことになる。この日は投歌数40首、うち互選票を獲得した歌が17首、内訳は5票2首、2票5首、1票10首となった。投票そのものにも重要な責任を伴い、事前の「よみ」という緊張感が増すことと、互選や伊藤先生撰と自らの撰が合致するか否かで、歌の「よみ」に対する深浅を確かめて行くことができて刺激的である。しかし考えるに、互選票のためというよりは、自分の歌を素直に表出することによって共感を得てゆくという姿勢が、必要なのではないかと考えさせられた。所謂、「読者」に迎合しない自分としての確固たる姿勢が求められるであろう。
冒頭に掲げさせてもらった2首は、ともに互選5票を獲得した歌であるが、ともに個性がキラりと光る歌となっている。互選歌であれば既に評価を得たという位置にあるので、むしろ厳しい批評も辞すべきではないという伊藤先生のお言葉もあった。冒頭1首目の歌には、「自転車は」の擬人化において「聞きいたり」と「聞きおらむ」ではどちらがよいかという点や、下句に関して「蜘蛛の繋げる糸の電話に」という推敲案が出され、歌作りの構造が可視化されて興味深かった。僕自身としては、「蜘蛛の糸」などはすぐに「払うもの」という乱暴な感覚があるが、それを「糸電話」としたところに、生き物への優しさが感じられ互選候補とした歌であった。2首目の歌に関しては、「井の中の蛙・・・」の諺を連想させることは効果的かどうかが議論された。「いっぴき暮らすもの」とは、どこか「謎めいた」ものを感じさせ、結句を「まるい」ではなく「まあるい」にしているあたりに「出口」という意味を読み取る意見も出された。
歌会は「主体的で対話的な深い学び」のあるところ
「正解」のない自由な対話から新たな「よみ」の価値が見つかる
懇親会での対話を含めて深い宵の口にて、僕自身は「不作」「悪戦苦闘」を乗り越えようと誓う。
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