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人間性の回復ー宮崎発地域ドラマ「宮崎のふたり」

2016-10-20
「夫婦は、てげてげがいいとよ。」
「ハネムーン=最高の満月」〜欠けていくだけ
宮崎発地域ドラマに見た人間性の回復・・・

NHKBSプレミアムで、宮崎が舞台の全国ドラマが放映された。以前から地域の放送では予告が盛んに放映されていて気になっていたので、帰宅後すぐにチャンネルを合わせた。柄本明演じる男は、嘗ての高度経済成長時代に土建関係の仕事に勤しみ、都市発展のためのインフラ整備に人生を賭けて生きてきたが、会社を退職後に自分を見失っていた。アルツハイマーを患ってしまった妻に愛情も注げず、「自分の何が悪いのか?」と傲慢な態度で息子に妻を託して、頑なに自己肯定にだけ溺れる惨めな晩年を迎えていた。施設に入った妻から簡易な絵が描かれた葉書が届くようになり、その光景は嘗て新婚旅行で訪れた宮崎の自然であった。そして男は独りで宮崎を訪れるところからドラマは始まった。タクシーで新婚旅行で訪れた先へと向かうが、運転手との会話の中でも男は、ハネムーン天国だった頃の宮崎からすると頽廃した光景を目にして、この地を罵倒する言葉を繰り返す。自分が都市のインフラを整備し発展させたという倨傲に裏打ちされた、「成長」のみに目が眩んだ男の罵詈雑言には、在住している僕でさえ頭に来るほどに言い倒す口ぶりであった。

タクシー運転手もその罵倒に辟易し、仕事を放棄しようとまでするが、その運転手の恋人の実家が嘗て新婚旅行で柄本役の男が泊まった旅館で、今は廃業し料理屋を営んでいる。この若い男女二人がこの男の宮崎での目的に向かって関わることで、夫婦とは恋人とは人生とは、といった様々な人間模様が浮上してくる。嘗ては南国の風景を背景にし賑わった公園施設なども今は廃墟になっており、「成長」を誇りにする男にはその宮崎の「今」が、誠に情けなく見えるのであろう。だがしかし、いつからか「静止」したかのような地域だからこそ、「自然」豊かな美しい光景が残っている。新婚旅行で二人だけで感激した光景をあらためて男は目にして、「何にも変わらず美しい」ことから、再び妻との対話が蘇ってくる。発病前に妻も独りで宮崎を訪れ、その光景に接していたようだ。その折も、男は「仕事で行ける訳はない」と妻をないがしろにして「会社」を優先していた。宮崎に「成長」がないとするならば、この都会で企業戦士であった男の生き様には、「人間=自然」がまったく失われている。それを回復できるのは、宮崎の純朴な「自然の光景」しかなかったということを、ドラマは訴えかけていた気がする。「仕事に生きる」とは何か?そして「一生の伴侶」とは何か?現実を見ても、「五輪」に「市場」と喧騒ばかりの都会には、既に「人間性」など微塵もなくなってしまっているのかもしれない。

男は人間性を回復し妻へ愛情を注ぐ生き方へと返り咲いた
僕自身が宮崎に住んで抱く感慨とも重なった
「成長」という倨傲からいち早く目覚めたものだけが、人間らしく生きられということだろう。
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