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「痒いところはありますか」のとき

2016-10-08
床屋さんで洗髪をするとき
「痒いところはありますか」
と問われてあなたならどうしてますか?

かなり昔、僕が中高教員だった時のことだ。国語の授業で文化的な評論文を学習した時のこと、担当学級のある生徒がコメントに次のような趣旨のことを書いた。「床屋さんでシャンプーするとき、『痒いところはありますか?』と問われて、関西の人は「どこそこが痒い」と答えるが、関東の人は「特にありません」と答えることが多いようです。」というものだった。それから意識して僕自身が行く床屋さんで周囲の様子を伺ってみると、十中八九の人たちが「大丈夫です」といった答えをしていることに気付いた。かくいう僕は、床屋さんのシャンプーというのが大好きなので、大抵は「両サイドが痒いです」などと言って、余計にマッサージを要求するのが常であった。関西の人にこの状況を聞いたことはないが、果たしてどうなのであろうか。

たぶんこれは「関西・関東」という二項対立の問題でもなく、床屋さんとの関係性の問題ではないかと思う。店主始め店員さんたちと、どれほどにコミュニケーションを取るか、という度合が大きく関わっているのではないだろうか。「床屋政談」という言葉があるように、「江戸時代から「髪結い処」は社交の場でもあった。「政治」から「経済」、そして「スポーツ」から「芸能」まで、店主や店員さんも様々な情報に精通している必要があった。その会話を含めてが「理容のサービス」と、僕などは心得ている。だが昨今は「10分間」で安価で仕上げる店などが増えて、こうした「サービス」などはどこへやらという風潮もある。若い店員さんも、世間の多様な方々との会話から、「人生を学ぶ」ことも多かったはずである。大仰に言えば、社会の中から「一つの社交場」が消えたともいえるかもしれない。誠にこの「世知辛い社会」というのはどうしたことなのか。

僕は相変わらず昨日も
「トップ(頭頂部のこと)をお願いします」と答えた。
商売上の人情「昭和は遠くなりにけり」かもしれないが。
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