2016公開講座第2回「ファンタジーの響き」
2016-07-17
読み語る「声」と「こころ」対象年齢を超えて味わいたいファンタジー
そこに「葛藤」があり、「葛藤」は人生の中心だから。
今年度公開講座第2回「ファンタジーの響き」を開講。来月実施する地域連携群読劇「星の王子様」へ向けて、受講者の方々と「読み語り」の意義とともに「声」で絵本を味わう大切さを体験する内容とした。よく講習等を通じて「絵本は何歳ぐらいまで読んであげたらよいのですか?」、という質問を受けることがある。その際に僕は「絵本には対象年齢はありません。高齢の老人でも大人でも味わうことができます。」といった趣旨の回答をすることにしている。実際問題として大人の方が絵本の中で描かれることを味わい、穏やかで優しい気持ちになったという報告を聞き、この回答に確信を持つことがある。僕自身は幼児の頃から、絵本が大好きでよく一人で本を読んでいた。その中に出てくる人間社会の様々な「葛藤」に、幼心が大きく揺さぶられたのだと今にして思う。ここに「ロバート・ペン・ウォーレン」の「「フィクションを読む理由」を引用をしておこう。
「フィクションが好きだから。
フィクションには葛藤があるからーそして葛藤は人生の中心だから。
その葛藤がわれわれを日常の退屈さからめざめさせてくれるから。
フィクションはわれわれの感情を、涙、笑い、愛、憎しみなどで発散させてくれるから。
そこに記された物語が自分自身の人生の物語への手がかりを与えてくれるだろうから。
他人の生活に逃げ込むことによって、生活の重圧から解放されるから。」
「ファンタジー」はもちろん虚構である。だが「虚構」にこそ人生の「真実」が埋め込まれている。僕たちは社会という荒波の中で、ともすると自分を見失い「見るべきものも見ないで」過ごしていることも多い。そんな荒涼たるこころに一滴の「フィクション」を差せば、遥かに「こころのかたち」が見え易くなる。自らを対象すべき「物語」の中に置き、相対化することで初めてこころは豊かに起動し始めるということだろう。元来、「文学」とは僕たちの「生活に意味を与えるもの」なのである。ところが学校空間では、それを「ワークブックに押し込めたり」とか「学問的に解剖する」など、「論理的」などという体裁の上で技術的に扱うことのみに終始するので、「本来の目的」を失ってしまう。「感想文」「語彙テスト」「答えを得るため」といった狭量で権威威圧的な作為で、豊かなはずの文学を歪めているのも事実であろう。僕は幸いにして幼稚園の時に、学校空間に先行して「豊かなこころの窓口」に出逢ったということになろうか。最後にまた「ゲイル・E・ヘイリー」の言葉を引用しておくことにしよう。
「生きいきと受け答えをしてくれる大人に、じかに話しかけられたことのない子供は、ちゃんとした話し方を身につけることはないでしょう。尋ねても答えてもらえない子供は、尋ねることをしなくなるでしょう。そういう子供は、ものごとへの好奇心を失っていくでしょう。そして、お話をしてもらったり、読み聞かせをしてもらったりすることのない子供は、本が読めるようになりたいとも思わなくなるでしょう。」
今夏、1人でも多くの子どもたちと大人たちに
こうした文学との豊かな邂逅をしていただき
穏やかなこころで人生を歩んでもらいたいと思っている。
群読劇公演は、8月6日(土)7日(日)18:00〜
宮交ボタニックガーデン青島にて開催。(詳細は後日小欄に掲載します)
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