どこか痒いところはありますか?
2011-10-22
理容室に行くのは月1度の楽しみである。待合席で普段買うことのない写真週刊誌を読み、荷物と上着を預かってもらい、いざその日の席へ着く。修業中の若手理容師が、まずはシャンプーを施してくれてからカット。耳の周辺と襟足をシェービングするとシャンプータイムになる。この時間が何とも至福のひと時だと感じる方は、どれくらいいるだろうか?自分で風呂に入ってシャンプーをする場合、面倒くさくてあまり入念さは伴わない。しかし、理容室で人に洗髪してもらうのは、たいそう贅沢な感じがする。しかし、中にはこのシャンプーを嫌う方々もいるやに聞いたことがある。他人の手指と頭皮の接触があまり好ましくない感覚だと捉えるからのようだ。まあ人それぞれで、様々な感覚が許容される時代。単に自分の好みを述べたまでで、違った感覚の方を否定する気は毛頭ない。
そのシャンプーが進むと、理容師が「どこか痒いところはありますか?」と尋ねてくる。これはTwitter投稿に掲載された意見であるが、関東の人は「大丈夫」と言って、更なる頭皮マッサージを要求せず、関西の人は「この辺りが痒いねん」と言って再度のマッサージを要求するという。果たして関東・関西の二分法で判別できる問題かどうかは疑わしいが、通常、小生の行く東京の理容室でも、多くのお客さんが更なるマッサージを要求していないようだ。
ところが、小生は理容室スタッフと意気投合しているせいもあるが、毎回「両サイドをお願い」とか「トップのあたりが痒いので」とかお願いするのが常だ。この日は、実際にあまり痒くなかったので、「既に入念だから大丈夫」と答えたのだが、頭を洗髪槽の中に下げているから、声がくぐもってあまりよく聞こえなかったのであろう。「全部入念にすれば大丈夫」とでも聞こえたみたいで、その後も、頭皮全体を入念にマッサージしてくれ大満足であった。
小生が贔屓にする理容室店主とは同世代で、彼がシャンプーしかできなかった修業中から長年の付き合い。今や店主として「先生」と呼ばれている。しかし稀にスタッフローテーションの関係で、店主自身がシャンプーをしてくれると、遥か昔に体感したシャンプーの手触りが蘇る。彼のお店に賭ける情熱は素晴らしいと、毎回感心するのだが、修業時代のシャンプーの手触り一つで長年の顧客を虜にしたプロということになる。小生のシャンプー好きもこんなところに由来するのであろう。何せ大学生時代から、この店主以外の人間に髪を切ってもらったことはないのだから。
それゆえに、お店のスタッフも皆、気さくで爽やかな人たちばかり。シャンプーマッサージを執拗に要求しても、笑顔で応えてくれている。
今やシャンプー自体を省略する簡易な理容室が増加した時代。
月1度の楽しみぐらいは、贅沢かつ存分に味わいたい。
「どこか痒いところはありますか?」
それは人間的なコミュニケーションとして重要だなどと、自分の専門研究と結び付けて、難しく考えたりもする今日この頃である。
- 関連記事
-
- 心根を見て付き合える人 (2011/11/24)
- 原初的成功体験を遡る (2011/11/22)
- 小さな契機をさがす (2011/11/19)
- 豆腐 (2011/11/03)
- 足で思考する (2011/11/02)
- 歴史に触れる醍醐味 (2011/11/01)
- 大学生時代の残像 (2011/10/23)
- どこか痒いところはありますか? (2011/10/22)
- 1日1日の重み (2011/10/08)
- 日本人の奇跡 (2011/09/21)
- 日常とは何か? (2011/09/05)
- 幼い頃の好奇心を再び (2011/08/03)
- 幼少時の記憶を再考する (2011/07/26)
- 岡田武史氏の含蓄 (2011/06/29)
- 今を生きる、それ以外ない (2011/05/25)
スポンサーサイト
tag :