老人から歴史を学ぶ
2010-12-22
21日(火)仕事を昼過ぎで終えて、午後は出版社へ原稿確認に。その後、夜は今週の忘年会が控えていた。忘年会といっても参加者は2人。毎週火曜日、英会話教室に行く前に夕食で立ち寄る洋食屋さんのカウンターに来る、常連さんである老人との忘年会である。いつしか、その老人と親しく話すようになり、店主、奥さんと共に、様々な話題を語っている。英会話教室の年内授業が、先週で終わったので、この日は、忘年会をやろうということになっていた。店主からは酒の肴に、骨付きフランク鉄板のせがプレゼント。どのようなものでも、逞しく食する老人。ワイングラスを片手に、この日はいつも以上に、思うがままの話題を老人と語り尽くした。
その中で驚いたのは、老人の祖母が「安政」年間生まれであり、父親は「明治30年代」生まれであること。「安政」といえば「大獄」と、誰しも歴史的な知識から言葉が出てくるだろう。また「明治30年代」といえば「日露戦争」の頃である。まさに『龍馬伝』や『坂の上の雲』の時代に、その老人の祖母・父親は生きていたことになる。老人自身の経験から、昭和1桁以降の歴史を聴くのも興味深いが、老人が祖母や父親から受け継いでいるものを聴き取ることは、更に貴重ではないかと思うようになった。
飲み続けていると老人は、「年寄りは年金を使い果たすから、そんなに長生きしない方が社会の為なんだよ」などと呟く。90歳に近い老人が、社会年金の心配をして長生きを否定しなければならない国は、どう考えてもおかしい。「そんなことはありませんよ。政治家が責任を持って、安心して長生きできる国を作らないと!」と返答しておいた。更に、こうした生の歴史を、小生などが話として聴き、学べることの意味が、何より「長生きの社会的な効用だ」と、老人に話した。
この小さな街の洋食屋さんで展開する、長大な歴史的生き証人の発言。これこそ我々が受け止めて語り継がねばならない内容であるはずだ。
老人と同じ、ウイスキーのロックまで飲んで、すっかりほろ酔い。閉店時間まで、約3時間に及ぶ忘年会は、お開きになった。外は雨が降り出していた。老人は店の奥さんからビニール傘を借りて、杖をつきながらまた1歩1歩、地面を踏みしめて帰路についた。そのあまりにも緩やかな1歩こそ、長大な人生を生きてきた証であるような気がした。店の前で老人と別れ際に、来週も火曜日に来店することを約束した。
生の歴史から学ぶ忘年会。
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