獺祭スパークリングにごり50
2010-12-12
11日(土)朝から住んでいるマンションの防火点検。この1年間、管理組合の理事長を務めているので、家を留守にして点検が不可というわけにもいかない。仕事は有給を取り、その点検に備えて待機した。緊急警報機の作動やスプリンクラー作動の模擬演習、それに消火器の状態などが点検され、さほどの時間もかからず点検は終了した。その後、メールを見てみると、昨夜送信した知人から返信。今晩なら仕事を終えて6時に会えるという内容であった。これで、土曜日の夜の予定が急に決まった。
その後、どこの店にしようかとあれこれ考えていた。場所は新橋なので、先月行った炉端焼き「うだつ」もいいのだが、他の選択肢も試してみたい店がたくさんある。博多水炊き餃子の「官兵衛」は、人気の店らしいので午後4時頃に電話を入れると、6時には予約が不可で、7時なら可能だという。仕方なく行き当たりばったりでどこか探そうかと思い、新橋へと向かった。街をふらふら散策していると、知人からメールで仕事が終わらず、6時には間に合わないという。特に急ぐわけでもなく、店の具合も丁度良い旨を返信した。そこで、改めて「官兵衛」に直接行ってみると、7時でも席が埋まってしまい、8時15分にならないと入れないという。「先ほどの電話では・・・」と話したが、その後の予約で埋まったということを、やや言い訳的に言われた。店員の小さな対応の仕方が重要だと思うのは、小生だけだろうか?
手元の携帯であれこれと検索している内に、SL広場近くの串焼き店「串まる」が気になった。料理が手作りで食器は店主作製であるというふれ込みもさることながら、「獺祭スパークリングにごり50」がメニューに掲載されていた。最近、この山口県旭酒造の「獺祭」が極めて気に入っているので、ぜひとも「スパークリングにごり」を飲んでみたかった。これまでは、新潟県の酒をとりわけ贔屓にしてきたので、西日本方面の酒で好んでいたものは少なかったが、この「獺祭」は格別である。
ちょいとビールを飲んだ後に、いよいよ「スパークリングにごり」へ。ほとんどシャンパンのような栓の付いた構造の瓶で、底に「にごり」の白い成分が沈殿している。栓と共に提供されて、ワインクーラーを用意してもらい、その中にある緑のボトル。沈殿物を混ぜようと思うが、あまり振ると吹き出しそうなので、店主に聞くとゆっくり振る程度にして混ぜるのがよいらしい。栓をして瓶を横にして、シーソーのように左右に傾けて沈殿物が混ざるようにしてみた。
そしていよいよおちょこで記念すべき1杯目。「獺祭」独特のフルーティーな味わいと同時に、やや酸味と刺激のある口当たりが何とも言えない。ほとんどスパークリングワインと言ってもいいような味わいに、知人と共についつい杯を重ね満足した一時が過ごせた。
酒を飲みながら語った話題は、「人生の自由度」ということ。仕事などによって意識をしないうちに、いつしか重い制約を受けて暮らしていることが多々ある。自分を見つめ直したときに、ふと「自分がすべき生き方」に反していることに気付いたりする。そんな本意でない状況に身を置き続けるほど、人生は長くない。制約下にある時間はあくまで浪費でしかなくなる。しかし、よくよく考えると人生は長いと知人は言う。お互いの年齢の違いもあるが、同じ話題で逆説的な考え方が出てくるところが面白い。
『龍馬伝』で「命を使い切ったか?」という絶命前の台詞が胸に響いたことも知人との話題に出した。自分の命をどう使うか、それは「自由度」と大いに関係していると思うのだ。夭逝した幕末の英雄だからこそ、生きるとは何かという意味を我々に強く訴えかけるのだろう。そういえば「獺祭書屋人」とは正岡子規の俳号でもある。先の酒は子規にちなんで名付けたと瓶のラベルに記してあった。龍馬同様に30代で夭逝した子規もまた、「命を使い切った」ことになるのだろう。ちょうどNHKドラマ『坂の上の雲』は、そんな場面を迎えようとしている。
「獺祭」とは、もともと「かわうそが自分の捕へた魚を四方に陳列すること。人が物を供えて祭るに似てゐるからいふ。」(大漢和辞典)とあり、中国古代から書物にも記されている。転じて、「作詩文に数多くの参考書を座の左右に廣げること。詩文を作るのに多くの故事を引くこと。」(大漢和辞典)という比喩的な使い方もするようだ。
「獺祭」という名の酒を美味しくいただきながら、人生における数多くの参考書たるお互いの「経験」を話題として酒場に広げ、その「生きる道」を語ることができた。
何とも粋な宵の内に、ほろ酔い加減になって地下鉄銀座駅で知人と別れた。
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