待っていた!#キッシンクリスマス2023ー仲良くしようよ!!
2023-11-28
今この時代だからこそ1986年・87年の聖夜の夢が蘇る
「すべての人の心にLOVE&PEACEを。」
長年にわたり、僕が待っていた夢のような1曲が配信リリースされた。『Kissin’ Christmasークリスマスだからじゃない2023』桑田佳祐&松任谷由実という夢のデュエット共演の再レコーデイング版である。ちょうど僕が大学を卒業しまだ日本社会が活況を呈していた頃、「メリークリスマスショー」というイブに一夜限りの音楽ショー番組があった。桑田佳祐さんを中心に多くのミュージシャン仲間が集まり、音楽の素晴らしを出演者が体現すことで「LOVE&PEACE」を視聴者が心に深く実感できる番組であった。エンディングテーマ曲であるこの曲は、長く音源として世に出ることはなく、ようやく2012年7月18日リリースの桑田佳祐さんの企画アルバム「I LOVE YOU-now&forever」で音源化されたが、その際は桑田佳祐さんのソロ歌唱によるレコーディングであった。それはそれでありがたく楽しんでいたのだが、やはり当時の番組に出演しこの曲の作詞者である松任谷由実さんの黄金のデュエットを多くのファンが待っていたのだ。
個人的にこの一曲への思い入れは深く、一昨年の聖夜に出版刊行した自著『日本の恋歌とクリスマスー短歌とJ-pop」(新典社選書108)の中心的なJ-pop楽曲として著作権許諾を得て掲載した。「kiss」という恋の一大イベントを簡単には至らない心理を踏まえて待つ姿を描いたこの楽曲は、個々の恋人が心に常に「LOVE&PEACE」を願い祈り待つという「恋のアンセム」であると同時に日本を代表する「Christmasアンセム」であって欲しい。自著では人の「待つ」という心理を横軸にして、古典和歌から近現代短歌を折々に縦軸にして「Christmasを待つ」そして「短歌県みやざき」や「人生は旅」であることを描いた一書である。そしてもちろん桑田佳祐さんの他のChristmasをテーマにした曲の歌詞も収録し、さらには松任谷由実さんの名曲「恋人はサンタクロース」も収録している。松任谷さんの事務所とは何度も手紙やメールでのやり取りを得ての収録許諾であったが、それだけに書き上げた思い出も一入であった。今年のクリスマスは、あらためて世界中の人とともに「LOVE&PEACE(愛と平和)」を「期待・希い・祈り」たいものである。
この荒んだ2023年に1986年の頃の平和を
家族も恋人も隣人もみんな「仲良くしようよ!!」
あらためてこの楽曲とともに自著をお読みいただければ幸いである。
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「穏やかに それぞれの思い 肌で感じて」
2023-10-07
「C’mon baby now」「C’mon tell me now」
「Oh wanna talk together」
「おいでよ君!さあ」「おいで おしえてよ!これ」「語り合いたいね!」再びサザンの新曲『Relay〜杜の詩』の話題。歌詞にある英語の文句が、曲の隙間から実に聴く者の胸に響く構成になっている。サザン(桑田佳祐さん)の歌詞はデビュー以来、「英語日本語」というか双方の響きを上手く融合し効果的に多重な意味を持たせるのが特徴だが、今回の曲も穏やかで静かな雰囲気の中で真骨頂を余すところなく発揮しているといってよいだろう。これは曲作りの過程「曲」→「仮歌」という点が大切であり、既に「曲調」の中に日本語・英語その他の外国語を含む「ことば」の総体としての「サザン(桑田)語」がリズムや拍の中で生まれてくるのではないかと、大変に興味深く思っている。もはや学校で教える「和語・漢語・外来語」などという部類分けを遥かに超えた次元で、曲とことばが交響しているといえるだろう。「杜の詩」もまさに冒頭の英語部分の優しい語り掛けに支えられている。
最近の社会は何事も「賛成か反対か?」「是か非か?」と問い詰め、即時に「結論」を求める傾向にある。この「二項対立社会」ともいえる状況こそが、苛立ち攻撃的になりがちなクレーム社会と化している要因ではないかと思う。日常の多くの場面で「詰問」的な物言いいが飛び交い、無防備な優しい心をいたく傷つけている。特に21世紀になってからこの傾向は顕著であるが、我々はこの20年余り自らが苛立っていることに無自覚に過ごしているのかもしれない。『Relay〜杜の詩』の偉大なところは、単に神宮外苑の樹木伐採に「反対」する曲なのではなく、人々が「穏やかに それぞれの思い(を)肌で感じて」という社会の風通しの良さを促す曲である点だ。例えば、職場で意見が食い違い「反対」された相手は「敵」なのか?否、だからこそ「語り合う場」を持たねばならないのだろう。誰しもが心を寄せてくれる同僚の思いを受け止めた時、そこにこそ仕事への生きるやりがいが生じるはずだ。そしてもちろん、家庭も全く同じなのである。
「コミュニケーションしようと」
「Oh 明日を夢見る 馬鹿でごめんなさい」
「意志を継ないで」家庭にも職場にも訴えかけたい1曲なのだ。
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言わないから強烈に意識される詩歌
2023-10-02
「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」(藤原定家)敢えてライブにて歌わない曲があって
「自分のいない世の中 思いやるよな人であれと」(『Relay〜杜の詩』サザンオールスターズ)
歌会の中で「結論を自分で言ってしまっている歌だ」という批評がなされることがある。僕の中ではなんとなく寅さんの「それを言っちゃあ〜おしめぇ〜よ」が心に響いてくる。この批評の趣旨は、「読者に想像していただき『結論』を読み取る表現にせよ」ということだ。世間では「論理的思考」などと標榜した欧米型思考の方法が席巻するが、「結論を先に言え」は全く日本型詩歌に逆行する発想になる。「言わないことこそ大きな声で伝わる」という発想の典型的な例が冒頭に掲げた藤原定家の一首である。「見渡すと(あまりに見事な)桜の花も紅葉も無いんだよね〜」と「無い」と言うことで、圧倒的な残像現象を巻き起こし読者の脳裏に「満開の桜」とか「深く色付いた紅葉」を印象付けることに成功し、下の句の「浦の苫屋」というやや粗末な感じを受ける光景がこれまた圧倒的な「秋の夕暮れ」の美しさに映える光景と響き合うのである。
「サザンオールスターズ茅ヶ崎ライブ2023」のライブビューイングを、宮崎の映画館で観た。何と全国で10万人の観客が約280もの映画館で、このライブ映像に心を委ねたのだと云う。今回の茅ヶ崎ライブは市民球場が会場のため、1回のライブ収容人数は1万8千程度とされている、それが「4days」設定されたので現地で観られるのが単純に「7万2千人」という訳で、諸々の情報では倍率が23倍程度(日付曜日の条件によって差はある)とされている。SNS上でも「チケットハズレ全滅」というような落胆の声が広がった。その為に急遽、ライブビューイングが後半2日間だけ設定されたわけである。コロナ禍によってWeb配信の技術が格段に高まった印象があるが、サザン(桑田佳祐さんソロを含み)関係でも配信のみのライブを横浜アリーナやブルーノート東京にて開催したこともあり、方法として事務所スタッフも長けているという条件もあったのだろう。この夜は茅ヶ崎の熱気を、宮崎の映画館のスクリーンを通しても十分に感じ取ることができた。この茅ヶ崎ライブを目指し、今年サザンが発表した新曲が3曲ある。そのうち冒頭に記した「杜の詩」は社会的な話題にもなる大切な曲だ。だがライブでは最後まで演奏されることはなく、メンバーが全て退場した後に会場のスクリーンに「MV(ミュージックビデオ)」にエンドロールという形で流された。(公式発表のセットリストにはあり)もちろんライブのそれぞれの曲もよかったのだが、この手法こそが「見渡せば花も紅葉もなかりけり」なのだと、僕はたぶん10万人の中で僕しか感じないことを悟り心の中で大粒の涙がこぼれたのであった。
(10万人×2日間=20万人)+7万2千人(4日間現地)=27万2千人
僕の人生に不可欠なサザンがまた大きなうねりを作り出してくれた
表現者の追究はいつまでも何処までも果てしないのである!
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お互い元気に頑張りましょうー桑田佳祐ライブ配信#5倍返しツアー
2023-02-16
ツアー開幕2日目に仙台で観た感激を再び千秋楽横浜アリーナの年越しライブドミュメンタリーフィルム
あらためて歌詞の咀嚼やアレンジの巧みさに幾度となく涙しつつ
今年も早、1ヶ月半が過ぎていった。元日に抱いた思いを、どれほどに叶えて生きているだろうか?10日とか15日間刻みで、あらためて日月を俯瞰してみることも大切かもしれない。このような意味で標題のWeb配信がこの時期に行われたのは、誠に大きな力を僕にあらためてもたらせてくれた。ツアー千秋楽の大晦日の横浜アリーナ、ライブ開始前や後の会場・舞台裏・スタッフの動きなどを含めたドキュメンタリ仕上げになっていたことで、時間意識がより覚醒させられたような気もする。僕自身は遡ること3ヶ月前、ツアー開幕2日目の仙台でライブステージを観た。今回の配信は、その復習としての意味もありツアーを通してどのようにライブが進化したかを見極められる機会でもあった。ライブ会場で桑田さんの歌に共鳴しながら身体で聞くのは陶酔感が高く、たまらない昂奮の中に身を置ける幸福感に満ちている。だが、あらためて自宅で画面越しに観るライブは、カメラを引いた視点から歌詞の一字一句を噛み締め細部までライブを味わうのに貴重な機会となる。まさに異時間ハイブリッドライブというわけだが、この3年間で培った大学講義のように「見逃し配信」を含めてこうした機会が得られることのありがたさを感じている。
大晦日に会場入りした桑田さんが、最初にしたことが「裏庭キャッチボール」だったとは驚いた。だが赤いグラブを嵌めスタッフと子どものような気分でボールを行き来させる心の余裕こそが、プロの日常のようにも見える。「キャッチボール」には、「思い」を相手の胸めがけて投げ、スタッフの「思い」を自らの左胸に受けるという単純だが意識しないと叶わない双方向的な意味がある。フィルム映像はズームや舞台周辺のカメラを駆使して、ライブ演出の細かい点を見せてくれる。会場では遠目に気づかなかったことに、「これも郁実ちゃんだ(主演ダンサー)!」など発見をあって観ることが楽しい。1曲目の選曲や演出の洒落が効いた入りに、次第に仙台の記憶と映像が重なってくる。このライブで個人的に感激したのは、好きな曲や自著(『日本の恋歌とクリスマスー短歌とJ-pop』新典社2021)に取り上げた曲の多くが演奏されたことだ。「MERRY X’MAS IN SUMMER」はダンサーが正月仕様の衣装であったし、「明日晴れるかな」はライブ前半の究極の掴みともいえる。仙台では「大漁唄い込み」が序曲となった「SMILE〜晴れ渡る空のように」では「赤い靴」で横浜仕込みとなり、自宅にいながら右拳を高く掲げている自分がいる。そしてライブが深く思い出されたのがアコースティクコーナーの「BAN BAN BAN」である。見事な弦アレンジとトリオギターの演奏がたまらなく心に響く。そして新曲の「なぎさホテル」と「平和の街」、僕と妻との仙台のテーマは今も「平和の街」だ。まだまだ終盤に向けて記したいことはあるが、「悲しい気持ち」で年が明け、アンコールまでの会場の興奮を十分に味わうことのできる配信に酔いしれた。
親友もこの日にもう一度見逃し配信を見ると連絡が
「平和の街で 共に生きよう」「お互い元気に頑張りましょう!!」
桑田さんのメッセージは2023年も貫き平和を祈り続けている。
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桑田佳祐「お互い元気に頑張りましょう」開幕宮城ライブ
2022-11-04
東北へ寄り添う思いを込めて歌を「平和の街」で聴くための集い
2011年9月10日・11日宮城ライブの植樹の木も育ち
なかなか手に入りづらいイベントチケットを入手できた際、特に遠方の場合、果たして現地に開演時間までに行き着くかは大きな課題だと思っている。研究発表などはもちろん、可能なら前乗り前泊が理想である。だが、今回も祝日開催で前日は夕刻まで仕事、当日の朝から距離にして1500Kmの移動は、様々な思いを巡らす旅となった。宮崎空港で搭乗待機中に「北朝鮮によるミサイル発射」の報がスマホに、対象地域が「新潟・山形・宮城」と目的地が含まれ、その後の航空便への影響がまず懸念された。幸い「宮崎ー東京」間は影響を受けておらず、順調にむしろ早く羽田空港に着陸した。東京駅まで移動し東北新幹線へ、するとやはり「発射」の影響はダイヤに10分ほどの遅れをもたらせていた。予約した列車を待つと、今度は隣のホームで「ベビーカーの転落による安全確認」のアナウンス、祝日で混雑したホームではこんな危険な事態も十分に想定された。列車は約20分少々の遅れで出発、最終的に仙台着は15分程度の遅延で到着した。それにしても「北朝鮮のミサイル発射」は我が国にも少なからぬ影響をもたらせている。「平和の街」で音楽に興じようとする一組の夫婦の足に、前述のような抑圧を課すのだから。
2022桑田佳祐ライブ「お互い元気に頑張りましょう」開幕の宮城。内容については「ネタバレ」をしないために記すのは控えるが、約2時間半を超える圧巻のステージだった。仙台駅近くから専用「シャトルバス(チケットに関連して購入できる)」で約40分で到着すると、思いの外ライブ商品売り場も空いておりTシャツを購入。そして、ぜひ観たかった2011年9月桑田さんの植樹の木を撮影、開場を時間までその周辺で待機した。チケットシステムとして入場時に座席場所が知らされるので大きな期待を持ってスマホ内アプリに格納した電子チケットを入場口でQRを読み取ってもらう。受け取った座席指定表に示された席は「東スタンド」とあり、番号に従って行くとかなり後方でステージまでは遠かった。座席は「抽選」で決まり会場到着時間に左右されないとの説明だが、早々の先行予約で当選したのでやや口惜しい思いを抱きながら座席についた。それでも桑田さんのライブにしては、収容人数が約8000人以内と少ない会場ゆえライブ感は次第に高まって来た。いささか曲のことを記しておくならば、僕が昨年出版をした著書に含めたものを3曲も披露してくれた。これは単なる偶然なのだろうか?ライブ会場にいる多くのファンの方々の中でも唯一桑田さんとの共有を手にしたようで、あくまで自己満足とはいえ深い感慨を抱きながらのライブになった。それにしても音楽をみんなで希望を持って聴くことができる、それが「平和」というものだ。随所にアントニオ猪木さん追悼の思いも込めて、桑田さんの「平和」への深い思いが伝わってきた。それにしても歌唱の底知れぬパワーと表現力、僕などはまだまだと新たな情熱をいただき、ライブ会場を出ると満月5日ほど前の「まだまだやれる」期待の祈りに通じる月が出ていた。
涙が溢れる曲がいくつもあり共に生きている実感を
そして昭和歌謡の熱い思いへの敬意を示すステージ
東北にまた力を注ぐ宮城ライブ、2011年以降の僕の課題を一つ成し遂げることができた。
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箒をギターにー見立てることから夢は始まる
2022-06-07
「時代遅れのRock’n Roll Band」MV(ミュージックビデオ)公開「学校」に集まってくる「少年」ならぬBandメンバー
誰しもがやった「箒をギターに」から夢に生きることは始まる
「時代遅れのRock’n Roll Band」(桑田佳祐feat.佐野元春・世良公則・Char・野口五郎)のMVが6月6日21時に公開された。「”6”ロックン”6”ロールの日」という語呂合わせの粋な計らいの公開である。既にYouTube上にあるので、ぜひご覧いただきたい。舞台は田舎の学校の校舎、ギターケースを持ったメンバーが次第に教室に集まってくる。机椅子が取り払われた教室の黒板を前に、センターにあるマイクを車座に囲むようにギターを携えた5人が取り巻く。集う向き合う密になることが憚られてきたこの2年間であるが、音楽を中心に集まった円の中心に声を投げ掛けるというのは誠に象徴的な光景である。音源だけで判断していた各パートも明らかになり、コーラスなどをともにするメンバーの表情には熟練の豊かさが見える。言うまでもなくこの曲は現在の世界情勢に抗う平和の曲であるが、その舞台が「教室」であることにも喜びを覚えた。「子どもの命を全力で大人が守ること それが自由という名の誇りさ」の一節は世界に広めたい歌詞である。
MVは進行とともにメンバーが「子ども」に帰る演出がある。幼少の頃の5人の実際の写真が画面に並ぶことも。そして5人に扮した子役たちが、「箒をギター」に見立てて演奏の真似事をする場面も用意されていた。この画面を観た時、僕自身の忘れられない経験が脳裏の奥底から浮かび上がった。小学校の卒業謝恩会でのこと、音楽を専科とする担任の先生だったこともありクラスの出し物は「全員オーケストラ」だった。個々の楽器の力が合わさって初めて成立する「オーケストラ」、まさに学校の「クラス」というのはそんな個々の多様性を象徴する場であるべきだ。事前準備の際に先生から「実際にギターを弾いてみないか」という誘いが何人かになされ、偶々僕にも白羽の矢が立った。だが参加するにはギターを買わねばならなかったが、母に相談するとそれは儘ならないという返事だった。今にして考えれば、同居していた叔母が高校時代にギターをやっていたことを知っていたのに、なぜ相談しなかったのかと思う。仕方なく僕はある親友とともにダンボール製のギターを手作りした。「オーケストラ」に色物的にツインエレキギターが加わり、まさにロックバンドよろしく激しい「エアギター」プレイをこの2名が見せたことに、先生は大変に喜んでくれた。その際の僕の「ギター」体験が、今回のMVを観て蘇った。もしあの時に本当にギターを買ってもらっていたら、こんな想像力や創作力はついていなかったのかもしれない。
「見立てる」そして「創り出す」
ごっこ遊びで芽生える夢への志の豊かさ
「歌えRock’n Roll Band !! 闇を照らす」
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世界に誇れるオヤジたちー『時代遅れのRock’n Roll Band』緊急配信
2022-05-25
桑田佳祐 feat. 佐野元春・世良公則・Char ・野口五郎全員66歳(1955年・56年生まれ)同級生
桑田さんが、まず世良さんに呼びかけ全員に手紙を書き協調し短期間で発表
イントロ立ち上がりでいつか聞いたギターの音色が響く、そうだ!Charさんの音だと思い既に痺れた。Aメロで桑田さんが歌い出し、世良さんがバトンをもらう。朝の連続テレビ小説「カム・カム・エブリバディ」でBARの主人役を演じていた世良さんが、ドラマ内でも進駐軍のクリスマスパーティーで歌う場面があったが、ツイスト時代の太く芯のある声は健在だ。さらには佐野元春さんの80年代ヒット曲「SOMEDAY」を彷彿とさせる歌詞もあり、まさに「あの日」がこの胸に蘇るような仕掛けもある。そして、僕らにとっては「新御三家」の一人であった野口五郎さん、今も特徴ある歌い方であの「私鉄沿線」で聞かせた間が生きている。66歳同級生のオヤジたち、僕らが80年代に憧れたミュージシャン世代、桑田佳祐作詞・作曲 feat.つまり4人が歌唱とギターで参加して、ほぼ1ヶ月で配信に漕ぎ着けたのだと云う。5月23日0時配信、まさにロシアによるウクライナへの侵攻から3ヶ月を前に、世界に発信したいオヤジミュージシャンたちの誇りである。
担当科目「日本の恋歌ー和歌短歌と歌謡曲」の第6回目は、「『百人一首』の待つ恋 feat.平和への祈り」とこの緊急配信の意志に呼応した。自著で取り上げた『百人一首』の歌は、いずれも長い夜をひとり待つ恋の心が述べられている。恋する人を「身もこがれつつ」待てる、ということそのものが「平和」であるということだ。待てど引き裂かれる恋人や家族らの悲惨、強引な強欲がひとりの市民の恋や愛を奪うという許されない惨状。「平安時代人」は、やはり社会が平和であったからこそ多様な「文学」が花開いたわけである。言葉や芸術を信じてこそ、人間の生きる価値がある。あまりにも過剰な科学的な進歩が、人類・地球を危機に曝している。親愛なる「人の心」を考える人文学の圧迫された退行は、そんな暗い未来への予兆だ。「この頃『平和』という文字が 朧げに霞んで見えるんだ 意味さえ虚ろに響く」と始まるこの曲の奥行きには、そんな音楽・芸術への矜持が覗き見える。「子どもの命を全力で 大人が守ること それが自由という名の誇りさ」の歌詞こそ、今全世界が考えねばならない思いが深く込められている。
この楽曲の収益の一部は「セーブ・チルドレン」へ寄付される
講義課題は「待つ恋」と「平和」をテーマにした創作歌詞
受講する学生たちとの90分間が、平和のための小さな渦になりますように。
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謙虚さと意欲の裏返し
2022-01-09
「早く言えばいいんですが、遠回しに・・・」桑田佳祐さんの謙虚さと意欲との裏返し
音楽が輝き続けるためには
昨年もそうだった。年明けの急襲、新型コロナが再び急速な勢いで感染拡大を始めた。宮崎はまだ全国的に見れば少ない方だが、地方都市でも3桁の感染者数の県もあり決して他人事ではあるまい。印象として前日の感染者数の「3倍速」で増加していく傾向は、やはり憂い深いものがある。そのため大事をとって「心の花宮崎歌会」も、急遽中止となった。やむを得ないこととはいえ、期待していた機会が失われるのは悲しいものだ。「恋歌」の新刊を著したので「恋」に喩えた物言いをするならば、「この日」にデートを予定していたのに定かでない漠然とした理由で断られるような感じであろうか。空白となった休日の時間は、埋め難いものである。しかしそこに縁あり、先日3日に配信された桑田佳祐さんのLIVEの「おかわり配信」がちょうどこの日の午後であった。書籍も再読が重要なように、2度目は違った視点で映像を観ることができる。再びそんな「意欲」を持ってLIVE配信に興じた。
あらためて桑田佳祐さんの偉大さを感じるのは、LIVE全編を通じて感謝と謙虚を忘れないことだ。「お客様あっての」はミュージシャンにとっての基本であるとはいえ、これほど「感謝」の気持ちが滲み出る人は多くはない。3曲目の「炎の聖歌隊【Choir】」の歌詞にある「開演お待ちどうさん ご来場 大変ご足労さん 毎日お疲れさん ようこそここへ」という言葉には、コロナ禍でなかなかLIVEができなかった思いも込められており、あらためてお客様への愛情に溢れた歌詞である。こうした新曲が収められているEP(ミニアルバム)「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat.梅干し」の売り上げは、多くの人気若手ミュージシャンを抑えて堂々の一位。それを自らコメントする際のなかなか言わない、遠回しな物言いがあらためて謙虚さを感じさせるのである。作品は多くの他者が評価してこそ光るものだ。しかしさらに桑田さんの根底にあるのは、「LIVEをしたい 音楽を愛し続けたい」という底知れぬ意欲なのである。2度目の配信再読で、そんな面を読み取れた私は、おかげですっかり元気になりましたとさ。
社会や世相をどう読んで生きるか
素晴らしき音楽の陰での様々なご苦労が
謙虚さと意欲を失わず自らが表現したいことにこだわり続けること。
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桑田佳祐 LIVE TOUR 2021”BIG MOUTH, NO GUTS!!”オンライン追加公演
2022-01-04
日常が戻ることへ「ありがとう」を込めて全国ツアー完走からオンライン追加公演という形式
「夢も希望も胸の奥で燃えている」(桑田佳祐『金目鯛の煮つけ』より)
LIVEがあればほぼ毎回会場に参加していたが、今回ばかりは”まだ”厳しかった。9月にツアーがスタートし比較的地理的には近い愛媛・広島・福岡などの公演もあったが、夏の感染拡大の余波も意識するとなかなか移動も憚られた。11月なら可能性もと考えて埼玉公演に抽選エントリーをしたがハズレ、抽選時点以降になると次第に公演収容人数規制が解除され、追加抽選が為されたが静観してこの日の「オンライン追加公演」を待った。大晦日でツアーは完走し、埼玉公演で収録した映像による「オンライン公演」と「おかわり公演」となる。この1年半で「オンラインLIVE」もすっかり定着したが、今後もこうした併用方式が主流になっていくのだろう。だが見終えての感想は、やはりLIVEは「生もの」であり会場で直接に参加する意義を再確認した。もちろん会場でも感染対策から声は出せず、拍手など動作のみの参加となる。だがその空気感の中に居られることと、画面越しに家に居る自分が観るのでは大きな違いがあるということだ。「オンライン」のみの「無観客」ならばまだしも「諦め」て「開き直る」ことで専念できる。映像に写る観客のみなさんの動作を観ているだけで、羨ましさとその可能性に一度は乗った身として「待てない」思いにもなるのだ。
タブレットを自宅のTVに繋いで観ることにも、すっかり慣れた。開始2曲『それ行けベイビー!!』『君への手紙』が大好きな曲であったから、なおさら興奮は高まる。3曲目に僕の愛車である「SUBARUフォレスター」のCM曲でもある「炎の聖歌隊【Choir】」でさらに疾走!全体的に昨年発売のEPの曲を随所に織り交ぜ、2011年以降の曲目での構成が目立った。そんな中で2002年のアルバム「ROCK AND ROLL HERO」に収録された「どん底のブルース」「東京」の中盤2曲が入ったあたりがアコギや歌唱の上でも僕にとって一番の聴きどころとなった。サビで「嗚呼 人間なんて嫌だ」がくり返され、まさに「どん底」の人生を歩む人間の悲哀が語られていく。こうした「生きることが苦しい」という叫びの兆候は、2000年代初頭に既に現れていたのだろう。コロナがとどめとなるように、さらなる「どん底」の世相が目の前にある20年後。桑田佳祐が長く第一線で輝き続ける理由は、こうした予言性とさえいえる社会を見つめる眼力といってもよいだろう。20年いやそれ以上が経過しても錆びない楽曲、アンコール前の『スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)』や『悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)』といったソロデビュー初期の曲を聴いて、さらにその普遍性を確信するLIVEであった。
しかし昨年3月のブルーノートオンラインライブもよかった
贅沢にも真の「ライブ性」を求めてしまうのだろう
メンバーとの手作り感満載のソロライブとして「新しい朝」の朝食のように。
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それでも明日はやってくるんだろう
2021-09-17
再び短時間豪雨の恐怖冠水した道路を注意深く走りながら
「心はどしゃ降り雨のなか・・・それでも明日はやってくるんだろう」
東シナ海での台風14号停滞の影響か、この日は宮崎に集中的に雨雲がかかり続けた。朝一時限目から、ゼミ生の教育実習授業があったので市内の附属小学校へと向かう。しかし、1時間の余裕をみていたつもりが道路は大渋滞、特に大淀川の橋を渡るまでにかなりの時間を費やし授業開始時間には間に合わなかった。それでも30分ほどは、宮沢賢治『注文の多い料理店』の授業を参観することができた。空腹な「しんし」2名が料理店に入り「・・・食べられます」などと書いてある看板に喜ぶが、「られ」には「可能」の意味ではなく「受身」の意味が二重に隠されている点を、文法的なことには触れずに物語の進行から読み取らせる小学校5年生の授業は興味深かった。授業終了後には、個人的な所用ですぐに自宅へと引き返す。しかし、さらに雨脚が強くなり運転中のスマートウオッチには「大雨洪水警報」や「避難指示」の警告が。車載のナビにも「災害情報」と「黄色」でその地域が示された。まさに帰路に通るべき地域、複数ルートの選択を考えながら車を進める。バイパスを降りていつも買物をするスーパーのあたりになると、道路がかなりの冠水をしていた。よくニュースで観る光景だが、水しぶきを左右に上げて車を進めねばならぬ。幸い最低地上高に余裕のあるSUVはこうした時にも大いに頼りになる。やっとの思いで自宅周辺に辿り着くと13日夜に匹敵するような冠水、自宅駐車場への帰還を諦めさらなる高台の大学研究室へと向かった。
Webで気象情報を見ていると、特に「宮崎市木花・青島地区」が危険度が一番高い「災害発生」のカテゴリー表示。土砂崩れや浸水が身近に起きる恐怖を感じつつ、雨雲の様子を窺った。午後には天候の回復が望まれる所用が控えていたので、気象情報から目が離せない。その後に行かねばならない地域も橋を越えねばならず、道路の浸水が気になりなかなか動き出すことができない。こうした際に重要なのは、居住地域や周辺道路の高低差を頭に入れておくことだ。僕はかつて東京で自転車通勤・通学(大学院)をしていた経験があり、その際に徹底的に高低差のないルートを考える習慣がついた。宮崎で自家用車を頻繁に使用するようになってからもその習慣は生きて、坂を登ることの少ない「省エネルート(燃費倹約)」を通る習慣がある。これが豪雨浸水冠水の際にも大いに役立つことに気づいた。午後になって雨は小やみになる時間帯もあり、所用はなんとか完遂することができたのだが、その過程で自家用車を離れての移動などですっかりずぶ濡れになった。夜にはNHK「SONGS」で桑田佳祐特集、冒頭に一部歌詞を記したが新曲『Soulコブラツイスト〜魂の悶絶』は映画『浅草キッド』の主題歌である。その歌詞の通りの1日を過ごしたと実感。あらためて桑田さんに励ましのお言葉をいただき、気分よく就寝。
「決してひとりぼっちで生きてるんじゃない
必ず明日はやってくるんだろう」
(『Soulコブラツイスト〜魂の悶絶』より)
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