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つまんないけど

2015-11-11
「わかんかくても
 みかんがあるさ
 ひとつおたべよ
 めがさめる」(谷川俊太郎詩集『わらべうた』集英社文庫より)

秋の宵の口、まったくつまらない気分に陥ることがある。元来が季節感を重んじる心性からであろうか、「秋は哀しき」という情緒に揺り動かされてしまうのだろう。この日は、早々に外食を済ませ秋の夜長を読書に勤しもうと複数の最新の学術雑誌に文庫本をテーブル上に並べた。実に面白く短歌を読み、自己の創作の参考になる機微を多く発見できた。次の雑誌に眼を転じると、大学の置かれている現実が克明に活写されるが如く記述されていた。その現実味に目が眩んでしまったのか、まさに「つまんない」という気分から抜け出せなくなった。

こうなると文庫本に至らず、風呂にでも入るしかなくなる。太陽光利用の温水で湯船を満たし、冷め切ったこころを温める。いつしか太陽の恵みを全身に受けたような感じとなり、気分も回復してくる。人間は冷えてしまっては、硬直し柔軟性を失い身動きが取れなくなるものだ。こんな夜を迎えるに至ったのは、1日の流れに起因している。朝一番の講義のあり方に、自身で納得がいかなかったのである。学生にもっと考えてもらう時間を多く取りたかったにもかかわらず、僕自身がついつい長く喋ってしまった。それを省みるに、様々に派生的なことが気になりだして、前述したような宵の口に至ったのだ。その流れは今朝にも尾を曳いていて、珍しくすっきりと早朝に起床することができなかった。

しかし、こうしたことを誰かに話せばこころは断然に回復する
もとより「みかん」好きの僕であるゆえ
谷川俊太郎の冒頭に記した詩の一節を反芻し今日もまた「めがさめる」
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水俣病資料館のことば

2015-03-23
人は
ボールを投げるために
後ろに
いったんふりかぶる
人は
高く上に飛ぶために
下に
一度かがむ
前や上を未来
後ろや下を過去
だとすれば
人は
未来のために
過去を振り返る
ここに生きる
希望を つくるために
水俣病資料館は
おきたことをあきらかに
しながら
犠牲を無駄にしない
社会づくりに役立て
未来に生きる
希望を作るために
あるのです

(平成18年当時 当館館長であった吉本哲郎氏による「資料館のことば」より)
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ささやかな約束

2013-08-21
ささやかな約束があって
必ずそれを守ると誓っていた
だが人はなぜにこんなに弱いんだろうか
いつの間にか約束を破る行為に及んでいた
すぐに気がついて己を恥じた

ささやかな約束があって
必ずそれを守り続けて来た
だがそれに有効期限はあるのだろうか
道の果てに一つだけ約束を破っていたことに気付いた
遅かれども約束を守ろうとする己

ささやかな約束があって
必ずそれを守り抜く愚直さが尊い
だが人は約束を超えてこそ成長できるときもある
自由に柔軟に大きく飛翔したい
それでもなお守りたい約束もある

真に愛すべき人への約束
ささやかな約束
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心の節目

2013-07-13
自覚と違うところにある心の節目
意識的な操作も許容しない処に潜んでいる
いつしかその範囲内でうごめき・もがき・さまよう
だけどその右往左往なくして先には決して進めない
気づいた時にあとからそこが節目になっている


それゆえに
軽薄な意図よりも日々一歩先へと踏み出すことである


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時を刻む

2013-06-29
朝起きれば時が刻まれている。
曜日という鋳型で自分の生活がある。
一定の流れに沿いながら一日を創る。

去来する様々な人との応対。
小さな出会いで流れに変化が生じることも。
その偶有性を味わいながら今日も時が刻まれる。

飛行機は飛び電車は走る。
精密に刻まれた時間通りに遂行される。
精密さに置いていかれないように人々は走る。

刻まれた時に左右されすぎてやしないか。
場所によって、そして眼前の人によって、
刻まれる時の速度や呼吸は大きく変化する。

いつしか忘れている。
自分が生きていることが先だ。
刻まれる時に支配されているのではない。

そんな呼吸をしていたい。
そんな場所にいたい。
そんな人といたい。


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「いま生きているということ」

2013-03-24
「生きているということ
 いま生きているということ」
(谷川俊太郎『生きる』の一節)

引き続き僕の声が語る。


ワインとなった葡萄の命をいただくということ
カウンターのグラスに人生を映すということ
語り合うことばに希望の光を見出すということ
Bon Vivant
人生を楽しむということ
いま此処で声を出すこと




簡単には語り尽くせない一夜であった。
まず今朝はこの創作の掲載にて。
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かれらとわれわれ

2013-01-30
「かれら」といえば他者が意識され、
対立軸上に「われわれ」が立ち上がる。

「われわれ」といえば自己の存在する範疇が意識され、
その枠外の者を「かれら」と呼ぶようになる。

小説の些細な表現をどう読むか。
人称代名詞にも思想がある。

なぜだか人は線を引きたがる。
保身のため世のため人のため?

「かれら」と呼ばれたら気をつけたほうがいい。
いつしか小さな穴の中の「われわれ」に注目されているかもしれないから。

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こころの栄養を得るところ

2012-10-07
自然と行きたくなるところ
良質な会話ができるところ
帰るとき笑顔になるところ
美味しいものがあるところ
人の優しさに溢れたところ
何も利害を求めないところ
日々真剣勝負であるところ

こころの栄養を得るところ
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夕焼けが美しい ただそれだけで

2012-09-28
夕焼けが美しい
ただそれだけで
僕の心は動く
何らかの意味を求めるのではなく
その美しさをことばにすることもなく

いつからこんなに夕焼けが美しいのだろう
その光景は季節の巡航を悟らせる
澄んだ高い空があるから
夕焼けも映える
それが堪らなく美しい

一日で成し得たものは何か
人はその日を振り返る
それは本当にやりたいことですか
おのれの魂が共鳴していますか
されど“意味”は夕焼けで無力化される

一日の終わりを告げる
地球規模最大の行事
素朴に飾らずただ自然に
雲間の居所 偶然の配色
夕焼けが美しい
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